うつ病になった話

自分には関係ない病だと思っていたうつ病になりました。 だいぶ復調しましたが、まだ日によっては思わしくないときもあります。

「自分はうつ病かもしれない」と感じて情報収集をしましたが、自分にぴったり合う事例が見つからず悶々としたことがあったので、自分の症状をまとめてみようと思いました。 もし、うつ病かもしれないと思っている方の助けになれば幸いです。

うつ病とは

うつ病は心の病。なんて言ったりもしますが、心って?と私は思いました。心は概念的なもので、物質的には存在しないので、それが病むということが腑に落ちませんでした。 厚労省のサイトでは「うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態です。」とあります。

▶ うつ病|こころの病気を知る|メンタルヘルス厚生労働省 www.mhlw.go.jp

脳がうまく働かないから、いつもと違う思考に陥ったり、行動に移せなかったりするのはとても分かりやすいです。 自分がなって思ったのは、うつ病はとても主観的な病気だということ。病院に行った時も、問診で「うつ病っぽいね。うん、うつ病だね」と先生に診断されました。 一般的な病気は、血液検査などをして、数値を客観的にみて判断しますが、うつ病は患者の自己申告で判断されるので、要は自分次第といった側面もあると思います。 とはいえ、症状が出ているということは何らかの異常が発生しているので、病気として存在しているのは間違いありません。 また主観的であるからこそ、症状も様々なんだろうと思っています。

私の症状

きっかけは仕事での大きなストレスでした。会社の上司やお客さんの上司まで巻き込んだ騒動を起こしてしまいました。 その当時は、寝る間も休日も惜しんで働いていました。いま思えば、この時からおかしかったのですが、自覚する余裕もないまま過ごし、少し落ち着いてきたころに症状を自覚しました。

頭痛

私は、普段ほとんど頭痛がないので、この症状は分かりやすかったです。数時間程度であれば気にしなかったと思いますが、1週間くらい続いたのでおかしいと感じました。

肩こり

これは普段からある症状なので、うつ病が直接的な原因ではないかも知れません。ただいつもよりも症状が重く、頭痛よりもつらかったのを覚えています。

近距離の視点が合わない

うつ病となってからも、いままで通り仕事を続けていました。机に座ってモニターを見ていても、気を抜くと焦点が合わなくなる症状が現れました。

寝つけない/夜中に起きて眠れない

これが一番嫌だったかもしれません。体調がおかしくなってからは、早寝早起きを心がけるようにしました。早い時には9時に横になります。しかしいっこうに眠れない日が週の半分以上ありました。 寝つけても夜中に目を覚まし、そのまま1~2時間寝られないことも多かったです。

休日、横になって過ごす

平日に寝られないためか、休日は横になっていることが多かった気がします。無気力であったことも関係しているかもしれません。

食欲の低下

食べることが大好きでコロナになる前は週末ごと、夫婦で美味しいものを食べ歩いてましたが、うつ病になると食欲が減退しました。空腹感はあるので食事はするのですが、いつもの半分くらいの量で十分でした。また食べたいものが思いつかず、ただタスクとして食事をしていた気がします。

涙もろくなる

ちょっとしたことですぐ涙が流れました。TVCMのワンシーンや他者の何気ないひとことであったり、様々です。涙活なんてものがあるくらいですから、ストレスが大きくなると出る反応なのかもしれません。

吹き出物の大量発生

吹き出物が出やすい体質なので、普段からできるのですが、とても増えました。顔にはいつも5~6個の大きな吹き出物がありました。ケアをすると症状は落ち着いてきますが、気が付くとまた出来ている。といったことを繰り返しています。

こういった身体的な症状が現れたので、病院に行きましたが、これよりも苦痛だったのは精神的な症状でした。

無気力

やらなければいけないタスクが分かっているのに、手がつけられない日がありました。机に座っていても仕事が進まずにいました。タスクを極限まで細分化しないと取り組めない時もありました。たとえば、必要な資料を確認する。ファイルを開く。内容をチェックする。作成するファイルを開く。。。といった細かなタスクをメモして、ひとつずつ潰していく。みたいな感じです。 ただ一方で、食器洗いのような単調な作業はできたので、仕事が進められなくなったら、簡単な家事をして気分転換をしていました。

何かにつけネガティブな思考

思うようにできないのでもちろんネガティブな思考になりがちです。やることができない逃避行動として、ネガティブ思考に陥っていた気もします。自分には価値がなく、存在意義がないと本気で思うようになりました。また影で自分のことを悪く言ったり、さげすんでいる人が浮かぶこともよくありました。

たまに暴力的/破壊的な妄想

ネガティブな思考の延長にあった気がします。誰かをものすごく困らせたり、傷つけたりする妄想です。こういう妄想は結局自分を疲れさせ、心をささくれ立たせるだけなので、こういう思考に陥ったときは無理にでもその相手の幸せを思い浮かべるようにしていました。

判断力・理解力が低下

この症状はかなり顕著に感じていました。仕事のちょっとメールが返信できない、打ち合わせでタスクを決められないなど、普段ならどうってことないものが判断できないことがありました。また自分では自覚があまりありませんでしたが、誰かの発言を誤った理解をすることも多くありました。まさに脳の機能がおかしくなっている証左かと思います。

集中力の低下

判断・理解ができないので、集中が持続しません。すぐに躓いて、席をたったり、違うことを始めたりすることが多くなりました。違うことを始めてもまた躓くので結局何も進められずに時間ばかりが過ぎていきます。

精神的な症状はすべてリンクしているように思えます。判断力が低下して、集中が持続できずにいるから無力感に苛まれる。無力感は、ネガティブな思考を生み出し、それがエスカレートして暴力的・破壊的な妄想につながる。といった感じでしょうか。

うつ病になってはじめたこと

うつ病関係の情報を収集する

自分がなぜこのような状態になっているのか、そもそもうつ病とはどんな病気なのか、うつ病になった人にはどんな症状が出てどう改善しているのか、などを情報収集していました。世の中にはうつに関連する情報が多いので、自分が信頼できるものだけを読んでいました。日によっては活字が読めないこともあるので、マンガもだいぶ読んでいたと思います。情報収集すると自分が何によって苦しめられているのか分かってくるので、原因が分かり少し楽になれた気がします。ただ、自分の症状に当てはまらない、もっと重篤な症状などをみると「自分はうつではなく、ただ怠けているだけではないか」と思うこともあります。この思考こそ、うつの症状であると書いてあったものがあり、とても気分が楽になりました。

読んだ本をまとめる

情報収集をして私が行きついたのは、自律神経を整える、ことでした。最終的には病院に行きましたが、うつ病と診断されるのが嫌、薬の服用も依存性のリスクから避けたいと思っていましたので、自力でなんとかしようと思っていたのです。(後でそれは間違っていたと思うようになりました)自律神経を整える作業として、写経があります。一定のリズムで単調な作業をするとよいそうです。意味も分からずお経を書いても仕方ないと考え、収集したうつ病の情報を手書きでまとめる作業をしました。なるべく丁寧に書くことで写経と同じような効果が得られたのではないかと思っています。また読むだけでなく書き写すので、病気の理解も進む結果になった気がしています。

現象をただ受け止める

問題にぶつかったとき、自然と解決策を模索して行動します。うつ病になると解決策を決めることができないので、現実と理想のギャップに苦しむことになります。うつ病の本に書いてあった「ただただ起こっていることを観察する」ことを実践してみました。いま自分は辛いんだな、仕事が思うようにできなくて苦しいんだな、簡単なこともできなくてプライドも傷ついているんだな、といったように自分を観察して状況を確認する作業をしました。不思議と肩の力が抜けていき、絶望とは違う少しポジティブな諦めを得ることができました。

自律神経を整える

先にも少し触れた自律神経です。人は自分の意志で生命を維持・コントロールしていません。心臓の鼓動も血液を送ることも、食物を消化・排泄することも無意識に、体が勝手にコントロールしています。自律神経を整えることは、うつ病の改善した後も継続的に実践すべきことと思っています。

・早寝早起きをする

寝つけない時も多々あるのですが、それでもとりあえず横になります。だいたい9時~10時に横になっていました。翌朝は5時~6時に起床するようにしています。週の後半は疲労がたまり7時くらいになることもありましたが、あまり気にせず疲れていたんだなと思うようにしています。朝早く起きて、白湯を飲んで、シャワーを浴びて、少し体を動かしてから仕事を始めます。私の会社は10時始業なので、7時から仕事を始めても始業まで3時間たっぷりあります。朝は深夜と同じで、誰からも連絡が入らない(入っても始業まで無視)ので、自分のペースで仕事ができ、快適でした。

・日の光を浴びる

仕事を始める前にベランダでストレッチをしました。本格的なものではなく、膝の屈伸・前屈・形回し・深呼吸など簡単なものです。外気に触れて、陽光を浴びるとスイッチが入る気がしました。体内時計の調整にも効果があるようです。うつ病になると季節を感じないことがあるようですが、外に出ることで日々の変化を実感することもできます。

・散歩をする

もともと歩くことが好きなので、苦も無く実践できました。平日はなかなか時間が取れないので、週末に行いました。私は東京の下町に住んでいて、お散歩スポットには事欠かないのもよかったと思います。少し遠出をしたいときは、電車で目的地まで向かい、徒歩で帰宅するなどいろんなバリエーションを作れたのもよかったです。気分が乗らない時もあるので、そんな時は3kmくらいのご近所散歩。歩いていて楽しいときは10kmくらいあてもなくさまよったりしていました。外気に触れ、日の光を浴びられ、リラックスもできるので、よい気分転換になっています。

・乳酸菌を摂取する

最近、腸が注目されていますね。第2の脳なんていうことも聞きます。私が注目したのは2点です。①幸せホルモンの多くは腸で作られる ②免疫力を高める です。腸を健康に保つことで、良い効果がられます。とはいえ、やることは簡単で、乳酸菌を摂取するだけとお手軽です。私はサプリメントとヨーグルトで摂取しています。目立った効果は実感できていませんが、何かいいことがありそうだと期待しています。

早くやればよかったこと

医師に相談/服薬

もっと早く症状を改善できたのではないかと思っています。うつ病と診断された自分にレッテルを貼ることに抵抗がありました。うつ病に対する偏見もあったかもしれません。また風邪や骨折のように完治が分かりやすいものと比較して、うつ病は完治が分かりにくいので、うつ病の自分と一生過ごしていくようなイメージを持っていました。いまは、それならそうで構わないし、上手に付き合っていければいいと思っています。

家族や同僚に相談、頼る

普通ではない状態になっているので、周囲の人は「なんかおかしい、うつかな?」と思っているようでした。それをひた隠して無理をして悪化させていた気がします。早く診断を受けて、その診断結果を周りに知らせていたら、もっと楽だったと思います。うつ症状が顕著な時は不信感の塊であった私でしたが、いまは人はとても優しいと思っています。妻は私の症状を気遣ってくれ、おかしいときはそっとしておいてくれます。会社の同僚や上司は、個別にメッセージをくれたり、私のタスクを振り分ける手伝いをしてくれました。正直、情けない自分を憂いたこともありましたが、できないのだから仕方ないと開き直っている部分もあります。自分がちゃんと復調したら恩返しをしたいと思っています。

仕事を休む

一度休んだら復帰できないのでは?と心配でできませんでした。いまでもそれは思っています。ただ無理を重ねても症状は良くならないので、休めるのであれば有効な選択肢だと思います。傷病手当を使えば会社の負担も少しは抑えられるので、相談をしてみるのもいいと思います。

さいごに

うつ病になって、いままでと違う自分になりつつあると感じています。仕事をバリバリこなして、会社でのポジションも上げて、周りから頼られて・・・といったものをビジョンとして持っていました。自分の思い通りに物事を進めることに躍起になっていた自分が、うつ病を体験することで、周囲との調和(もちろん自分との調和)をとても意識しています。これまで尻を叩いて進ませようとしていたのを並走するスタンスに変わった感じ、ともいえばいいでしょうか?自分の弱いところを自覚することで、他の人にも同じように弱いところや苦手なことがあると分かりました。それは優劣ではなく個性として理解しています。うつ病に対しても大らかに考えられるようになりました。風邪をひきやすい人がいるように、うつ病になりやすい人もいる。それも体質・感性・個性の違いだと思います。

うつ病は自分や世の中を悲観的に考えることが得意な病気なのです。つらいときは誰かに頼ったり、じっと身をかがめて耐えたり、人によって様々ですが、必ず復調するので希望をもって冷静に対峙できるといいと思います。苦しんでいる人が、1日でも早く自分らしい毎日を過ごしていただくことを祈っています。